平成11年9月10日
榊  恭範先生

インプラントと天然歯の連結


  ロング・スパンの歯周補綴は、一般的に上顎では十分な本数のインプラントを埋入し、可能な限りスパンが短くなるようにデザインする。

 そしてフリー・スタンディングでインプラント支持の補綴物を装着するほうが、長期にわたるメインテナンスでのトラブルを最小限に抑えることができるだろう。

 しかし、歯周病のために残存歯牙がインプラント支持を必要とする場合は、天然歯と連結したフル・アーチの設計をせざるを得ない。ただしこの場合には、残存歯牙の抜去やインプラント埋入により将来補綴物を変化させねばならない可能性があることを、患者十分理解していただく必要がある。

 重度の歯周疾患羅患歯において、一度失われた歯周組織を完全に最盛することは、現在の臨床技術では不可能である。そのため、歯牙の動揺が残るケースに対しては歯周治療終了後に連結固定が必要となる。しかし、残存歯の状態、数などによっては、連結固定が不可能な場合も多く存在する。
 そこでインプラントを歯周補綴の固定源としてえ用いることは、有効な手段であると考える。

 インプラントと天然歯を連結する際には、そ咬合の与え方が非常に重要な要素となる。天然歯の圧下によるインプラント補綴物へ過荷重を防止するためには、インプラント・ユニットとその対合歯との間に最低50ナノmのスペースが必要といわれている。実際の臨床ではレジストレーション・ストリップスがその基準となる。また、側方運動時の咬合接触についても考量するべきである。
加えて、筆者は全顎的な連結固定を行う場合、固定歯群が直線的に並ぶよりも歯列に沿って弯曲している方が、頻舌的な水平圧に対して抵抗性を示すと考えている。
 歯根膜を有する天然歯と、歯根膜の存在しないインプラントとの可動性の差をカバーするために内冠を装着することも、力の分散を図るうえで有用であると思われる。また、さまざまな理由によって装着物をはずす必要が生じた場合にも対応が容易であるなど、多くの利点がある。